血液中のカリウム濃度が低下した状態で、さまざまな原因で発生
カリウムは細胞、神経、筋肉が正常に機能するのに必要で、体内のカリウムの98パーセントが細胞の内部にあり、残りのわずか2パーセントが血液中など細胞の外部に存在しています。しかし、血液中のカリウムは細胞の働きを調節する上でとても重要で、濃度の値が乱れると全身に障害を生じます。
濃度の低下を引き起こす過度のカリウムの喪失は普通、嘔吐(おうと)、下痢、慢性的な下剤の使用、または結腸ポリープが原因です。まれに、極度の高温多湿の状態で多量の汗をかくことによっても、多量のカリウムが体から失われます。
拒食症や大量飲酒などで長期間に渡って偏った食生活をした場合にも、低カリウム血症が起こります。カリウムはさまざまな食物に含まれているので、バランスの取れた食事をしている人に低カリウム血症が起こることはまれといえますが、加工食品が多くなってきたことやストレスなどにより、起こる可能性が高くなってきているようです。
カリウムが尿に出てしまう理由は、いくつかあります。最も一般的なのは、腎臓(じんぞう)に働き掛けて過度のナトリウム、水、カリウムを排出させる利尿薬の使用です。アルドステロンは腎臓に働き掛けて多量のカリウムを排出させるホルモンですが、クッシング症候群になると、副腎がこのホルモンを過度に分泌します。
また、大量の甘草(かんぞう)が含まれる漢方薬を服用する人や、特定のかみタバコを使用する人の場合も、カリウムの排出量が増えます。リドル症候群、バーター症候群、ファンコニ症候群の発症者には、カリウムを保持する腎臓の能力が阻害されるというまれな障害がみられます。
インスリン、ぜんそく治療薬のアルブテロール、テルブタリン、テオフィリンといった特定の薬剤は、細胞内へカリウムが入る動きを促進し、その結果、低カリウム血症を引き起こすことがあります。しかし、これらの薬剤の使用だけが原因で低カリウム血症になることはまれです。
血液中のカリウム濃度が軽く低下している程度では、普通は症状は生じません。激しく低下すると、脱力感や筋力低下など骨格筋の症状、悪心(おしん)、嘔吐(おうと)、便秘など消化管の症状、そして多尿、多飲など腎臓の症状が主体ですが、極めて激しく低下すると、四肢まひ、呼吸筋まひ、不整脈、腸閉塞(へいそく)などに至ります。心臓の薬のジゴキシンを服用している場合は、軽度の低カリウム血症でも危険です。
原因によって、治療法はさまざまです。カリウムの摂取を増やしても改善しないことも多いので、内科の専門医を受診して精密検査を受けることが勧められます。
低カリウム血症の検査と診断と治療
内科の医師による低カリウム血症の診断は、血液中のカリウム濃度を測定するだけで可能ですが、その原因を明らかにしなければ治療ができません。まず、食べ物、薬、点滴などによって体に入るカリウムと、尿中などに出るカリウムのバランスを調べるために、血液中、尿中の電解質濃度、動脈血ガス分析などの検査を行います。
消化管からのカリウム喪失が疑われる時は、内視鏡などによる消化管の検査が行われ、腎臓からのカリウム喪失が予想されれば、腎機能検査や副腎皮質ホルモンの検査などが行われます。また、全身の症状を調べるために、心電図や腹部のX線検査なども行われます。