脳および心の障害で起こる疾患
精神疾患とは、脳および心の機能的、器質的な障害によって、精神の変調が引き起こされる疾患。統合失調症や躁(そう)うつ病といった重度のものから、不安障害(神経症)、パニック障害、適応障害といった中、軽度のものまでの多くの疾患を含みます。
世界保健機構 (WHO) による国際疾患分類(ICD-10)や、アメリカ精神医学会による統計的診断マニュアル (DSM-IV)においては、診断カテゴリーを用いて網羅的に分類しています。これにより、個々の精神疾患の診断が世界全体で以前よりも標準化され、一貫性を持つようになりつつあります。
以下の精神疾患の分類は、世界保健機構による国際疾患分類に基づきます。
●症状性を含む器質性精神障害
●精神作用物質使用による精神および行動の障害
アルコール、アヘン、大麻、鎮静薬または催眠薬、コカイン、覚醒(かくせい)剤・カフェイン、幻覚薬、タバコ、揮発性溶剤などの精神作用物質に関連した精神疾患。依存症、乱用、中毒などに分けられる。アルコール依存症、薬物依存症など
●統合失調症・統合失調型障害および妄想性障害
●気分(感情)障害
●神経症性障害、ストレス関連障害および身体表現性障害
不安障害、恐怖症、単一恐怖、広場恐怖、社会恐怖、パニック障害、全般性不安障害、強迫性障害、重症ストレス障害、急性ストレス障害、PTSD(心的外傷後ストレス障害)、適応障害、 解離性障害、解離性同一性障害(いわゆる多重人格)、身体表現性障害、転換性障害、心気症、疼痛(とうつう)性障害、身体醜形障害
●生理的障害および身体的要因に関連した行動症候群
摂食障害、神経性無食欲症(拒食症)、神経性大食症(過食症)、 睡眠障害、不眠症、精神生理性不眠症、概日リズム睡眠障害、入眠困難、中間覚醒、早朝覚醒、過眠症、睡眠時無呼吸症候群、ナルコレプシー、原発性過眠症、反復性過眠症、特発性過眠症、睡眠時随伴症、レム睡眠行動障害、睡眠時遊行症、夜驚症
●成人の人格および行動の障害
妄想性人格障害、統合失調質人格障害、分裂病型人格障害、境界性人格障害(境界例)、自己愛性人格障害、演技性人格障害、反社会性人格障害、強迫性人格障害、回避性人格障害、依存性人格障害、性同一性障害、性嗜好(しこう)障害、フェティシズム、露出症、窃視症、小児性愛、サディズム・マゾヒズム、虚偽性障害、ミュンヒハウゼン症候群
●精神遅滞
●心理的発達の障害
●小児期および青年期に通常発症する行動および情緒の障害
多動性障害、チック障害、トゥレット障害
●その他
幻覚、妄想、文化依存症候群、神経質、対人恐怖症
精神疾患の診断と治療
精神疾患の治療とケアを行うための訓練を受けた専門家は、精神科医だけではありません。医師以外の専門家として、臨床心理士、ソーシャルワーカー、看護師などがいます。ただし、このうち薬を処方する資格を持っているのは精神科医だけです。医師以外の精神医療の専門家は、主に心理療法を行います。
医師による診断においては、精神疾患を判別するための研究が進み、以前よりはるかに正確にできるようになっています。診断方法も進歩し、CT(コンピューター断層撮影)検査、MRI(磁気共鳴画像)検査、ポジトロンCT(PET)検査(脳の特定領域への血流を測定する画像診断法の1種)といった脳の画像診断が行われています。
重い精神疾患に対しては、薬物療法と心理療法を併用することが治療効果を高めると見なされています。ストレスの緩和は精神疾患の症状の緩和につながることから、音楽療法、運動療法、ユーモア療法などが活用されることもあります。
精神疾患を予防したり、症状が軽減、消失した後の再発防止のために、社会適応能力を習得したり、趣味やスポーツなどでストレスを適切に管理することも、重要視されています。
また、家族など周囲の人間が理解を示すことも必要です。精神疾患に偏見や差別的な見方を持っている人もいるため、それが発症者のストレスとなり、引きこもりがちに、内向的になることもあるためです。